ツアー参加者の感想 2000年
2000年度大阪府立大学海外農業研究会
NGOの未来に向けて援助の樹が育つとき

Nshiyama・ Kishimoto・ Nakagawa ・Yamamura ・Ikeda・ Fujiwara
大阪府大の海外農業研究会の皆さんから、夏休みを利用して、『国際協力』」と言うテーマの研修のために、実際のNGO活動に参加して調査したいので協力して欲しい とのメールが届いたとき、嬉しいと同時に、まだまだ試行錯誤の真っ只中のGNCで良いのだろうか?さらに、2000年度からは全く新たなウランバートルでの活動開始と言うこともあって期待にそえるかどうかとても不安なものがありました。そこでGNC自身にとっても今年度は今後のための各機関へのヒアリングがメイン活動であり、順調に軌道に乗った植林活動を体験できるものではなく、まさにこれからどのように展開させていくのがよいのかを共に見、聞き、感じて、考えていってくれるのならということで、彼らには参加してもらうことになりました。
大学の伝統ある研究会だけあって、彼らは実に規律正しく、熱心で真面目、それでいて、時として微笑ましいくらい仲がよくて、久しぶりに出会ったとても爽やかな若者達でした。帰国後、彼らのさまざまな調査報告の結果をまとめた立派な冊子を送ってくれました。その中から、GNCとしても、常に模索し続けている農業振興とモンゴル独特の遊牧文化との相反する問題点や、NGOの未来に向けての大きな役割などについての彼らの考察結果を抜粋して、ここに掲載させてもらいました。
NGOの未来に向けて〜援助の樹が育つとき〜
はじめに
.....NGO活動は国際協力の場において活発になってきた。「これからはNGOの時代}と言う声も聞こえる。ただ、日本においてNGOの歴史はまだまだ浅い。NGOの活動は国際協力においてどのような意味を持ち、今後どうなっていくべきか、自分の目で実際に見て、NGOについて考えたい。そのような思いから私たちはインターネットを利用し、調査に協力してくれるNGO団体を探した。
そしてGNC(Global Network for Coexistence)というNGO団体が主催する「2000年度GNC緑援隊 第4回モンゴル植林ツアー」参加することにした。GNCのツアーを通して、NGO活動というものについて私たちなりに考えた。
GNCの援助活動 GNCの文化保護
...GNCは援助を始める前に「一般に農業は遊牧よりも収入が多く、移動して生活しなくてよいというメリットを持つため、遊牧から農業へ転職する人が増えるだろう」と考えていた。そう考えるとGNCの活動は遊牧文化の衰退につながる可能性がある。しかしモンゴル人は遊牧文化を守りたいと考えている。この二つをどうすれば両立させられるだろうか。自分たちの活動とモンゴルの遊牧文化との兼ね合いに悩んだ。
...モンゴル政府はモンゴルで農業が可能な土地は少ないが、その土地を十分活用すれば、モンゴルの完全自給は達成可能である
としている。GNCの最終目標は完全自給達成であり、、農地面積はモンゴルの総面積から考えると非常に狭く、遊牧を圧倒することはないということである。GNCの活動は一概に遊牧の衰退につながるわけではないことがわかる。...さらにモンゴルでは農業が普及しにくいという事実があった。それは環境面、資金面、技術面の問題があるためである。環境面の問題とは土地問題である。農業用地は国から指定されており、旧ソ連時代に耕された土地を借りなければいけない。また、借りるにも政府の許可が必要なのだが、そこで多大な賄賂を要求される場合もある。また、借りるだけであり、その期限までに結果を出さなければ、土地は没収される。資金面の問題は、水を確保するための大金が必要で、農具や機械を備えると莫大な資金が必要となる。たとえ、資金も土地もあったとしても技術が乏しければ成功は難しい。昔は旧ソ連の人々に指導を受けていた。しかしソ連が崩壊した現在は、技術指導を行なう者も少なく、一般のモンゴル人が本格的な農業の技術を得ることは困難な状況にある。
...さらにGNCは活動の対象を遊牧民ではなく、都市に職を求めて来た人や遊牧生活をやめて無職になった人に限定するという対応もとっている。そうすることにより、農業は広がるが、遊牧文化も守られると考えたのだ。
...こうしてみると、GNCは現地のニーズを考え、文化を守るように活動を行なっている。
モンゴルの文化に対し植林の影響を考え、開発と文化の両立を模索していたのである。援助の前段階として確認をとったGNCの判断は正しいであろう。思いつきで援助を始めるのではなく、考えるべきとこを考えなくては正しい援助にならないのである。
援助の根本にあるもの
..GNCの活動を通して私達が考えた根本的な問題について述べる。防風林がしっかりと機能を果たすようになるまでは時間を要し、すぐに結果はえられない。小さくとも地道にやっていこうとするGNCの姿勢はよいところだが、目標を達成するためには人員が不足していると感じた。事実上、モンゴルの活動員はツォゴー氏と彼が雇う数名のモンゴル人であり、他に仕事を抱える日本スタッフは植樹の時期ではない夏に訪れるのが精一杯の状況だ。これでは、植林をするにも基本的な労働力が足りない。このままでは日本スタッフは状況を視察し、資金を提供し、時には技術的に意見を述べるのみの存在になってしまう。GNCは資金を出すだけの存在になりたくない。なぜなら、現地の人と強いつながりをもって触れ合いながら活動したいと考えているからである。それなら、まずはスムーズに活動を進められる程度のスタッフを確保することが必要だ。つまり、労働力を増やし活動自体が個人援助の大きさから、もう少し大きくなることが必要なのである。ここから、私たちは根本には活動規模の問題があると考えた。 ....しかし、モンゴルスタッフに関しては、前述のように、すぐに人員を増やすことは難しい。そのためGNCとしては、将来的に啓蒙活動をすることでモンゴル人の意識改革を行ない、現地スタッフを確保することを考えている。日本人スタッフに関してはどうであろう。これは、NGOはボランティアとして自主的に活動に参加してくれる人を待つかたちが主流であり、NGOであるGNCが希望数の人員を常時確保することはできない。現在の状況では、なかなか改善は難しいようだ。
...GNCは自主的参加を待つだけでなく、専門知識を持つ専属スタッフも求めていた。よって、問題解決には有償の専属スタッフを得るのが1番の近道である。
...ここで、もう一つ資金の問題が根本の問題として挙げられる。資金が十分でなければ効率的に活動を進めていくのは難しい。GNCにとっても他のNGOと同様に、資金調達は重要な問題である。十分な資金があればGNCの望むように専門知識を有するスタッフを雇うことができ、また、その資金を活かして広報活動を充実させればスタッフが増える。
...活動規模から判断して、会員からの会費だけでは十分な資金とは言い難い。資金は主に助成に頼っている。しかし、助成金は結果を書類にして提出する形が主流で、植林においては植樹の木の本数などで評価が決まってしまう現実がある。GNCの活動が進んでいくためには、正しく評価されもっと多く資金が確保できるべきだと思う。現在の体制では、本来の活動に目が行き届かないゆえに正当な評価を得られず、GNCとして十分な資金をえられない現状がある。結果だけを見て資金を給付する形ではなく、もっと活動そのものを判断する制度が必要である。私たちはGNCを通して、根本には活動規模と資金の問題があると考えた。これらが解決されれば、現在進められているネットワークが充実し、足りない部分を埋めていけるような協力体制ができ、GNCの活動はより進んでいくのではないだろうか。
より良い援助を目指して
...GNCの活動意欲を肌で感じ、援助をする上で意欲は大変重要なものであると感じた。「困っている人を助けたい」という気持ちがあっても、よほどの情熱がないと実際行動に移すことは難しい。国際協力において情熱を持ち、国の関係に左右されず純粋に地球のことや人のことを考える活動は重要な意味を持つ。NGOは、ネットワークを作り、政府や民間の区別なく可能性のあるところに働きかけるという柔軟性を持つ。また、理念やこだわりを持ち団体としての各々の特徴が違い、様々な状況に対応して援助ができる。かなり大規模な援助もできる可能性は大いにある。これからも、色々なNGOができてくるだろう。
...しかし、現状からNGOの活動の限界点もあると感じた。人員と言う面では、自主性に任せた参加だけでは必要な人材を確保できない。ODAと違い、後ろに大きな組織を持たないNGOが最適な規模で効率的な援助をするのは困難だ。
...意欲があれば、NGOを立ち上げること自体は難しくないと思えた。だが、GNCを見ると、活動する上で考えなければならない点は山ほどあり、NGOを実際に運営していくことは大変なことである。問題が改善されることもなくだらだらと活動だけが続く団体がでてきてしまうのではないか。自己満足のためのNGOなど必要ない。また、意欲を持って活動を開始しても、厳しい現実を前にして援助が中止されることもあるだろう。それではせっかくの意欲を潰してしまうことになる。
...海外で援助を受ける人は、ODAだろうとNGOだろうと関係ない。援助される側にとって重要なのは、援助がどのような結果をもたらすかである。
...現在、NGOの資金面に対してODAが協力する働きがある。NGOのよりよい援助を考える上で、ODAとの歩み寄りも積極的に考えるべきだ。しかし、ODAが活動に関与する可能性があることで、消極的なNGOも多い、今後は一つ一つのNGOの援助の質を高めていく事が大切だ。そのためにはODAやNGO、さらには私たちのような第3者でもいい、NGOをサポートする体制が必要だ。
...援助は樹である。葉(成功)を茂らせるには、枝(活動)を伸ばす必要がある。枝を伸ばすには、幹(理念)がまっすぐしていなければならない。そして幹を支えるには、しっかり根(基盤)を張らなければならない。ここにNGOという樹がある。この樹の根を張らすには、環境(体制)を整えることが必要なのだ。
...活動の忙しい中、私たちの質問にいつも快く応えてくださった宮木いっぺい氏、ツォゴー氏をはじめとするGNCの方々に厚く御礼申し上げます。
ツォゴーさん
...ツォゴーさんはGNCスタッフの一員である。車力村で通訳をしていたときにGNCの活動に感動し、GNCに参加することになった。そして、1999年から、自ら土地を耕して、キュウリやキャベツ、ジャガイモなど10種類以上の立派な野菜を作っている。実際に農場を見学したときにもらったこれらの野菜は大変おいしいものだった。
. .ところで、ツォゴーさんは他のモンゴル人とは一味違う。彼は日本人的要素とモンゴル人的要素の両方を持っているように私には感じられた。普段の何気ない話の中で、彼は、「日本の国を変えた明治維新はすばらしい」とか、「孫の代まで植林した土地を残すのだ」とか一般のモンゴル人からはあまり耳にしないことをしばしば私たちに熱く語っていた。しかも彼の愛読書は司馬遼太郎氏の本である。彼はいつも勉強熱心で日本語を学ぶためにこんな日本の本を読んだりもしているのだ。基本的に勤勉な日本人的要素を持ちあわせているようだ。
. .一方で、私たちはツォゴーさんの言動の中に誇り高いモンゴル人的要素を垣間見ることもできた。例えば、一緒にレストランで、食事をしていても、「このキュウリはマズイ、私の作ったキュウリの方がおいしい」といったように、彼は自分の作った農作物に誇りを持っていた。普段は優しい顔付きのツォゴーさんだが、農業のことになるといくぶん鋭くなるよに思えたくらいだ。
。..このように勤勉な日本人的要素と、誇り高いモンゴル人的要素をもったツォゴーさんは、モンゴルにとっても、GNCにとってもこれから大切な人材だ。
ピラニア 国際協力−私たちが見てきたもの−より
2000年11月3日発行 海外農業研究会一同 編著
発行所 大阪府立大学海外農業研究会
